
何でしょう?
芥川龍之介の杜子春と言えば、小中学生の頃に読んだ方も多いでしょう。
貧乏な青年が鉄冠子という仙人の力により二度大金持ちになる。その度に人の浅ましさや身勝手さを知ることになり、人間に愛想を尽かした杜子春は人間を超越した力を持つ仙人になるため、鉄冠子に弟子入りを志願。様々な辛い試練に耐え続ける杜子春ですが、実はそれらはすべて鉄冠子の幻だった。最後の試練で、馬になった彼の父母が拷問を受ける様を見せつけられ、堪えられずに声をあげたところで現実へ戻る。その後、鉄冠子に諭されて財産や仙人になることよりも大切なことを知る・・。最終的に、杜子春は「人間らしい、正直な暮らしをする」と言い残しお話は終わりです。
芥川龍之介は、地位や名誉、財産といったものよりも大切なものがあることを、読者に伝えたかったのではないかと思います。そして、最後の試練で馬になった両親に出会ったときの杜子春がとった行動が、それを表しているように感じます。
「なんになっても、人間らしい、正直な暮らしをするつもりです」
(『杜子春』より引用)
この、杜子春の最後の言葉が作品を象徴するテーマではないでしょうか。
「人間らしく、正直に暮らす」とは現代社会ではなかなか難しいようにも思います。物語冒頭のように、お金や名誉に溺れそうにることもあるはず・・。そんな時こそこのお話を思い出して、日々の中で「何が一番大切なのか」を見つめなおすと良いのかもしれません。